Sals5 Progress

友人と待ち合わせをして最寄のガストに立ち寄る。レジ横に輝くSalsの表紙。しかしそこには1冊しかない。人数を聞いてくる店員に2人と応え、レジ打ちをしていた別の店員に在庫の数を尋ねる。
結局それが最後の1冊ということだった。時はまだ昼過ぎ。何だよそんなに売れているのか。友人は優しい笑顔でその最後の1冊を自分に譲ってくれた。
席につき注文をしてビニールを破る。先に見てくれと友人に渡した。

最高に楽しかったころの記憶をとどめ、さらに合宿風景というとんでもない爆弾を収録したSals3の煽りを受けたのか、次に出たSals4は見所を見つけるのが中々に難しかった。
そしていま友人がページを繰っているこのSals5は、ガッタスが壁にぶつかり、苦闘し、敗れ、何人かの掛け替えのない仲間と別れていった日々がおさめられている。

そのままガストではろくに内容も見なかった。別冊の里田まいに度肝を抜かれたり、このために友人まで呼び出してガストに来る羽目になったポストカードを苦笑交じりに眺めたり、仕事や盆の休みのことを話したりしながら時間は過ぎ、友人はお盆の雰囲気で一杯の職場に戻っていった。後から街の本屋で無事入手したとの報せがあって、ほっと胸をなでおろした。

その後TSUTAYAに寄った。TSUTAYAにはSals5の在庫はないようだったけれども、自分は本来の目的だったCD売場に立ち寄った。何とはなしに棚を見て回り、何とはなしに試聴して、コクアの『Progress』を買って家に戻った。

買ってきたCDをかけながらSals5を読みはじめたら、自分でも可笑しいけれど勝手に気分が盛り上がってしまって、巻末の斉藤瞳の記事で泣いてしまった。

気分を変えようと思ってDVDを見る。紺野あさ美の「前へ進もう」という気概にあふれたラストインタビューを見て、多分彼女の中には一点の曇りもない、彼女には自分が選ぶべき道が見えているのに違いないと改めて確信した。


Progress


勝負事は彼女たちの思い通りにならない。当然ながらやるべき仕事とやりたい仕事は必ずしも一致しない。
合宿や伝説の5.23を経て、一度個と個が濃密につながりあい結びつき、小さな光り輝く塊にまで濃縮したガッタスは、今また爆発し拡散していく段階に入っているかのようだ。
斉藤瞳がチームを離れ、紺野あさ美が一旦芸能界から距離をおき、エルダとワンダは引き裂かれていく。この流れの中で、ガッタスはいつまでガッタスであり続けることが出来るのだろう。

もちろん喪失ばかりではない。ガッタスの傍らにはリトルガッタスが生まれ、モーニング娘。には8期が誕生する。

チームを離れてもわたしはガッタスだと言い切る斉藤や紺野の言葉が頼もしく、そして途方もなく嬉しい。


いつの日かきっと、ひとりのメンバーも欠けることなくガッタスが再集合する日が来るだろう。そのころまでにはガッタスにも新しいメンバーがいるし、新しい顔も旧い顔も一堂に会してボールを蹴ったり思い出話をしたりする。でもそれはきっと、カメラもない記者もスタッフいない、この地球の片隅にあるどこか小さなコートの上でのことだ。

その光景を目にすることは多分できないかもしれない。けれど、そんな日に至るまでには、まだまだ長い道のりが彼女たちの前にのびている。

だから、勝っても負けてもチームを離れても仲間を失っても、彼女たちは互いの肩を担ぎあい支えあいながら こう言うのだ。



『あと一歩だけ、前に 進もう』