海の沈黙

日記を書く、というボタンを押して、真っ白な空白を見つめる。そのままどれくらいの時間がたったのだろう。背後では「R.P.G.」が流れている。“これ以上は何を知りたいの?”と後藤真希が呟いた。
もともとの原作はあるプロットを結実させるためだけの装置だった。それは閉ざされた世界で、救いは無い。
そしてNHKの「R.P.G.」。原作とは違う結末。だがそこには、やはり救いは無かったとしか言えない。未来への道は指し示されないまま、一美のルサンチマンが生まれる瞬間がそこにあっただけだ。面会での一美は憑り物が落ちたようにすっきりとしている。だが深夜独りで目覚めた時、去来する記憶は人間を容易に過去へと連れ去る。
「今夜は、酒を飲む気には、なれんな」武上のこの一言が、このドラマを象徴している。

日記を書く、というボタンを押して、真っ白な空白を見つめる。そのままどれくらいの時間がたったのだろう。追い詰められていくのは何故だ。