S.O.G. 修正

11月22日に発売されるガッタスのインタビュー本。

それをもとに先日放送されたDOKYUによって、案の定、2chでは不毛な論争が続いたようだ。しかしながら、あれはガッタスメンバー(のファン同士)の諍い?のようなものだからまだいいけれども、某筋から漏れ聞く内部情報によると、インタビュー本はさらなる地雷が埋め込まれたものであるということらしい。一部のモーニング娘。のファンにはどう受け止められるのか。些か不安なことも確かである。

ガッタス本を書いたライター陣は当然ながら相当の熱量を持ってガッタスの魅力を描き出そうと努力する。そういう情熱的な姿勢があるからこそ、その本が持つパワーが増すのであって、そういうスタンスは決して間違いではない。

しかし、先般のDOKYUでも触れられていた“モーニング娘。やアイドルの芸能活動という立場では絶対に味わえない経験”という立ち位置は、おそらくかなりの回数にわたってガッタスインタビュー本に出てくることになる。ガッタスというものの特殊性、または長所を描くにはそれは容易なアングルである。一方で、モーニング娘。がそういう熱さを失った場所であると、無言のうちに語っているような錯覚を生む恐れがゼロであるとは言えない。

編集者は何よりもその対象について第一のファンであることを自認する。だからガッタス本の中では当然ガッタスが最高なのであり、このガッタスインタビュー本はそういうスタンスで描かれる本であることを忘れてはならないだろう。


最近は過剰とも思えるガッタス及び吉澤ひとみのメディア進出を受けて、吉澤ファンの中からも、ガッタスを疑問視する声が多くなってきたいるようだ。しかし、こと吉澤ひとみにおける「モーニング娘。ガッタス」という比較論は、卵が先か鶏が先かの議論にしかならない。

モーニング娘。での経験はガッタスの戦いに還元されている。サッカー経験者である是永でさえへたりこんでしまうほどのプレッシャーを、吉澤はじめ他のメンバーは真正面から受け止めて、動ずることなくしっかりとコートに立っているではないか。武道館、紅白、Mステなど、幾つものステージを経てきたその胆力は、常人のものではない。時折ガッタスが見せる奇跡的な勝負強さの根底にあるのは、芸能活動を通じて積み重ねてきた胆力である。スピリットがテクニックを上回る瞬間を、自分はガッタスの戦いにおいて、何回も目撃してきている。

同じように、ガッタスでの経験はモーニング娘。の活動に還元されている。吉澤ひとみのリーダーシップも、ここ一番というときの集中力瞬発力も、それは多くの場合、ガッタスで培われたものだ。

象徴的な話がある。

「わたしが世界で一番幸せな誕生日を迎えている」と語ったのは、2005年4月12日のガッタス練習終了後のことだった。コミュニケーションをとることの大切さを知り、みんなに愛されていることを知った吉澤。その映像の中の彼女は大きな目をキラキラと輝かせて、ひたすら嬉しそうだった。


その2日後、モーニング娘。に激震が走る。


だが矢口と話した吉澤は、躊躇なくリーダーを受諾した。昔では考えられないことだ。長い間吉澤を見つづけてきた者として、「昔では考えられないことだった」と、普通にそう思う。リーダーがどれほど損な役割であったか、「自分は主人公ではなくてリーダーだ」と悟った飯田圭織がどれだけ己の個性を押し殺してきたか、吉澤は見てきている。そして知っている。

だがその時の吉澤には、悩みを打ち明けられる里田やアヤカがいた。練習をしっかりと積めば誰もが主人公になれるガッタスがあった。「世界で一番幸せな誕生日」の余韻がまだ色濃く漂う中で、次の大きな一歩を踏み出すのは、難しい決心ではなかったに違いない。


モーニング娘。には序列がある、と言い切ってもいいだろう。一度のミスや一度の上層部判断によって永遠にセンターに立てないモーニング娘。と、努力すればきっとそれが報われることになるガッタスの違いは大きい。

だが。

だが無論、そもそもの前提条件が異なるものなのだから、違いが大きいのは当たり前の話なのだ。両者をならべて比較することは無意味である。ほとんど完全に無意味である。



言いたいことはひとつである。

モーニング娘。吉澤ひとみがなければ、ガッタス吉澤ひとみは存在し得なかった。同じくガッタス吉澤ひとみがなければ、今のモーニング娘。であり歌手である吉澤ひとみも存在し得なかった。そういうことだ。

分けることなどできない人格を、無理やり分けて考えれば、必ず人を見誤る。




来るガッタス本では、同じひとつの表現が、ある人には肯定的に受け取られ、同時に別の人には否定的に受け止められることになるだろう。


でも、そこには「失われたドラマ」があると期待する。モーニング娘。ガッタスも軽々と飛び越えて描かれる「人間」の姿があると期待する。